和解条項とその説明について

 

 

  以下は、三城誠子氏による<和解条項違反>が目に余るため、この事件における和解ということはどういうことだったのか、坂井大輔弁護士がわかりやすく解説してくださった文書です。

<和解条項>と共に記しておきます。

   (平成18年3月24日東京裁判所民事題47部準備手続室)

                     

 

名木田恵子(水木杏子)

   

 

 

 

株式会社明日絵に対する展示等差止請求事件の和解の内容について

 

 

 本件裁判における請求の内容

 本件は、平成17年9月30日に、名木田恵子氏(以下、「名木田氏」と言います。)が、株式会社明日絵(以下、「明日絵」と言います。)に対し、以下の事項を求めて東京地方裁判所に提起した訴訟です。

(1) 漫画「キャンディ・キャンディ」(以下、「本件漫画」と言います。)の原画の展示禁止

(2) 本件漫画に掲載された手紙文の展示禁止

(3) 慰謝料10万円及び弁護士費用30万円の支払い

 

 明日絵の対応

 以上の名木田氏の請求に対して、明日絵は、()名木田氏には展示差止の権利がない、()慰謝料等は発生しない、として、請求の棄却を求めました。

 

 和解の内容

 このように、当事者双方の主張が完全に対立している状況で、平成18年3月24日、別紙添付の内容の和解が成立しました。

 これを当事者の利益との関係で示すと以下のとおりとなります。

 

【名木田氏の要求を認めた部分】

(1) 明日絵は、「いがらしゆみこ美術館」(以下、「本件美術館」と言います。)において漫画「キャンディ・キャンディ」の原画、及び、同漫画に掲載された手紙文を展示しない。-第1条

(2) 明日絵は、和解日以降、本件美術館において、本件漫画に関係する表示又は図画を使用せず、本件漫画に関係する表示又は図画を撤去する。-第2条

(3) 明日絵は、和解日以降、本件美術館の名称として「I © CANDY MUSEUM」の表示を使用せず、看板等からその表示を撤去又は削除する。-第3条

(4) 明日絵は、本件漫画の原画や同漫画に掲載された手紙文を展示する場合は、名木田氏の許諾を得る。-第5条

 

【明日絵の要求を認めた部分】

(1) 第2条の表示又は図画の撤去、第3条の「I © CANDY MUSEUM」の表示の撤去、和解日以前に印刷、製造された「I © CANDY MUSEUM」の表示のある入場券等の使用禁止を平成18年6月末日(和解日の約3か月後)まで猶予する。-第4条

(2) 和解条項が守られた場合には、名木田氏は、原画の展示や看板等に本件漫画に関係する表示等がなされたことについて金銭的請求をしない。-第6条

 

 これを上記名木田氏の請求との関係で整理すると、

(1) 漫画「キャンディ・キャンディ」(以下、「本件漫画」と言います。)の原画の展示禁止

 → 名木田氏の許諾がない限り禁止

(2) 本件漫画に掲載された手紙文の展示禁止

 → 名木田氏の許諾がない限り禁止


(
3) 慰謝料10万円及び弁護士費用30万円の支払い

 → 和解が守られることを条件に放棄

とされ、このほかに、

(4) 本件漫画に関係する表示又は図画、「I © CANDY MUSEUM」の表示は、約3か月の猶予期間を設けて使用禁止

とされたことになります。

 

 このように、本件では、明日絵が名木田氏が求めた原画等の展示禁止を認める代わりに、名木田氏が明日絵に対する金銭的請求を放棄するという内容の和解が成立しています。

以 上

平成22年8月26日

 

名木田恵子代理人弁護士 坂 井 大 輔

 

 

 

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(別紙)

和解条項

 

 

 被告は,本日以後,自らが運営する美術館(岡山県倉敷市所在の「I © CANDY MUSEUM いからしゆみこ美術館」。以下「本件美術館」という。)において,漫画「キャンディ・キャンディ」(以下「本件漫画」という。)の原画及び同漫画に掲載された手紙文を展示しない。

 被告は,本日以後,本件美術館において,表札(建物自体に付された表示を含む。),看板,案内用の地図及び標識,記念撮影用のボード並びにウェブページ(ウェブページのアドレスは「http://www.aska-planning-design.co.jp/museum/museumtop.htm1」である。以下包括して「看板等」という。)に本件漫画に関係する表示又は図面を使用せず,自らの負担で,看板等から本件漫画に関係する表示又は図画を撤去又は削除する。

 被告は,本日以後,本件美術館において,同美術館の名称として,「I ©CANDY MUSEUM」の表示(以下「本件表示」という。)を使用せず,自らの負担で,看板等から前項の表示を撤去又は削除する。ただし,本日以前に印刷又は製造された,本件表示の付された入場券,優待券,割引券,チラシ,パンフレット,ポスター,会社案内,封筒,使せん,シール,菓子等の商品ないし消耗品(以下これらを包括して「入場券等」という。)を引き続き販売又は使用することについてはこの限りでない。

 原告は,被告に対し,第2項及び第3順に定める義務の履行を平成18年6月末日までそれぞれ猶予し,被告が本日以前に印刷又は製造された入場券等を販売又は使用することに対して異議を述べない。

 被告は原告に対し,被告が,本件美術館において本件漫画の原画及び同漫画に掲載された手紙文を展示する場合には,事前に原告の許諾を得ることを約束する。

 原告は,その余の請求を放棄し,第1項から第3項までに定める義務が履行されることを条件として,今後,被告に対し,本件漫画の原画及び手紙文の展示並びに看板等における本件漫画に関係する表示又は図画の使用について,金銭的請求をしない。

 原告及び被告は,相互に相手方を誹謗中傷しない。

 原告は,平成17年(ヨ)第22079号著作権仮処分命令申立事件を取り下げる。

 原告及び被告は,原告と被告の開には,本件に関し,本和解条項に定める外は,何らの債権債務のないことを相互に確認する。

10 訴訟費用,補助参加入に要した費用及び和解費用は各自の負担とする。

以 上