業者について思うこと
 
 
とうとう私は業者たちを訴えることになってしまいました。
その<業者>たちについて、一束ではくくれないので述べさせていただきたいと思います。
 
訴えている業者は<アースプロジェクト><タニイ(株)><ダンエンタープライズ><サンブライト><アイプロ(いがらし氏)>です。
<アイプロ(いがらし氏)>については繰り返しになるのでここでは述べませんが、他の業者たちについては<事情を知っての行為者><半分巻き込まれた行為者>とわけて考えております。
 
<事情を知っての行為者、アースプロジェクトとタニイ(株)>
まず、<アースプロジェクト>の伏見氏の陳述書を拝見する限り自分はなにも知らず責任もない、といったご主張です。しかし<アースプロジェクト>は<アース出版>の顔も持ち、漫画界に知己も多いと聞いています。1998年の12月ごろ伏見氏と電話で話した夫によると伏見氏は「マンガジャパンにしげく出入りしてる」とご自身語っておられるのに、後日そのことを確かめるとなぜか「マンガジャパンとはつきあいがない」と否定されました。
<マンガジャパン>は漫画家の団体でいがらし氏が世話人をつとめていました。(今回の私といがらし氏の問題の多い契約書の立会人はマンガジャパンの顧問弁護士です)
その団体の趣旨のひとつとして<出版社から権利をとり戻し、漫画家個人が権利をもつこと>と聞いています。またこの間、多方面から聞くところによると<原作者より漫画家の労力の方が勝るので権利関係など考慮してほしい>という呼びかけもなさっていたそうです。マンガジャパンは現在、そういった主張は撤回されこの件に関しても<いがらし氏の主張は独自のものであって、マンガジャパンとしては原作者も権利を同じくするパートナーと思っている>との書面をいただいています。
伏見氏はマンガジャパン関係の漫画家の復刻版に力を注いでいらしたようです。アース出版の出版リストのをみれば伏見氏とマンガジャパンとのつながりの深さがよくわかります。
<原作付きの漫画家たち>ともお仕事をなさっていた伏見氏が<原作者>について無知とは考えられません。また、1997年冬にはアース出版関係のホームページ(懐漫倶楽部)ではフジサンケイアドワークの版画(と称するもの)を通販していました。
漫画界の事情にくわしい伏見氏が、何故<原作者否定>の片棒をかつがれたのか遺憾に思います。
次に<タニイ(株)>の谷井氏も、その陳述書で「いがらし氏と山崎和義弁護士が水木には著作権はないといったから」また「昭和53年の<にせTシャツ事件>追求に加わったのは確かだが<原作者の存在も知らなかった>と述べておられます。
昭和53年当時、谷井氏と行動を共にしてその事件に関った東映アニメのT氏に谷井氏の陳述書をお見せしましたらあきれておられました。
にせTシャツ事件を刑事告訴する際、原作者として<水木杏子>が押印した書面が必要で、それを谷井氏がご存知ないはずはありません。
東映版権部のT氏もなにより苦労をともにした谷井氏の今回の行為を情けなく、悲しんでおられました。この件とは別件かもしれませんが、キャンディグッズの多くは東映アニメの<商標権>を侵害しているのです。
谷井氏の陳述書のトーンはやわらいでいましたが、1998年11月浅草橋のタニイでおびただしいグッズの展示会を開催している事を聞き、衝撃をうけた私が思わず電話で抗議したところ「いがらしさんの絵だから問題ない!」と言い張り「ならば、なぜ勝手にマルシーに水木の名前を入れたのか」との問いには答えず「訴えたいなら訴えたらいいじゃないですか!」といわれたその居丈高な言い方はまだ耳に残っております。
地裁判決後もあちこちでみつかったグッズ類の多くは<タニイ(株)>関係の商品で、その製造元に向井弁護士が抗議を繰り返すたびに「タニイさんがもう<和解>したので売っていいといった」という返事が返ってきました。
タニイ系列の<(株)ドリームカムズトルー(おもちゃのタカラ子会社)>などは今年2000年春の東京おもちゃショーにまで出品し、同社もそれを認めています。
今回の事件で、私が特に谷井氏に対して厳しい目をむけるのは、(もし谷井和彦氏に良心があったならグッズ企画の時、過去の<にせTシャツ著作権侵害事件>のことをダンとサンブライト話してくれなったか(お二方とも聞いていなかったといいます)ならばこんなにたくさんの製造業者を巻き込まずにすんだのに…)と悔まれてならないからです。
谷井和彦氏の責任を強く感じます。
また、判決3ヶ月後の5月ごろ、谷井氏、ダン、サンブライトがしげく東南アジアに出かけているという情報を耳にしました。その頃、香港の九龍でタニイ製のTシャツがみつかったと聞き(アップルワンのジグゾーパズルも)その6月、ダン、サンブライトが尋ねてきた際、そのことを問い正しました。ダンたちは否定し「谷井氏共々パスポートをみせる」というお約束はまだ果たしてくださっていません。
現在、(2000年夏)<アップルワン><ポイントインク>など数多くのDANのシールをはったグッズが香港で販売されています。(証拠品として香港から購入してきていただきました)お約束通りぜひ谷井氏を含めた三者のパスポートを拝見したいと思っています。
 
<半分巻き込まれた業者>
ダンエンタープライズの大上氏の陳述書は、ほぼその通りだと思います。
1998年9月、私は大上氏からの電話によって<ダン>の存在を知りました。商品のマルシーに<水木>の名前を入れているので許可してほしいというのです。
その時、私は強く断ったはずです。<いがらし氏は水木は原作者ではない、といって反訴している。係争中なのでなにも許可はできない。勝手に許可なく水木の名前などマルシーに入れないでほしい。すぐに中止しないと大変な事になる。>と繰り返し強くいいました。
大上氏の反応は曖昧なものでしたが礼儀正しい感じで事情はおわかりになったと信じていました。
しかし11月,タニイにおいてめまいがおきそうなほどのグッズの展示会か開かれていることを知らされました。私はそれまでこの事件を隠してきましたが、もうこれは公表して世に問わねば、と決心したのがその時です。
11月の証人尋問にも大上氏はみえたようです。そのときはまだ<サンブライト>の存在は知りませんでした。
12月、クリスマスにむけグッズ販売があちこちでなされ、このままでは判決後、混乱すると予想した夫が業者に連絡、そのとき始めて<サンブライト>が企画者と知ったのです。
夫から連絡するまでは、ダンもサンブライトも素知らぬ顔でしたが、その後話には応じ<伊藤真弁護士にいわれ、いがらしさんがなんといっても原作者と認めているからマルシーに入れた>という姿勢もある程度理解できました。
判決後も誠実に対応してくれたと思っています。
ダンもサンブライトもいがらし氏本人から「だれがなんといってきても心配ない。どんどん営業をがんばるように!」(ダン陳述書より)と励まされていたというのですから、信じてしまったことも分かります。
私としては<控訴>されず、いがらし氏が一審を認めたならば東映とも協議の上、生かせる業者もあると判断していました。その後、ダンたちも伊藤真弁護士と一緒に東映とも話しあったはずです。
しかし、いがらし氏は<控訴>しました。
原作者ではないと<控訴>されているのにグッズの許可などできません。<著作権は確定いしていない>という主張なのですから<そういった不確定の相手>にグッズの許可を求めること自体、理解できません。
ダンたちは<ビジネス>と<裁判>は別に考えて欲しいとおかしなことをいい、いがらし氏にも「許可をもらってきなさい」といわれたそうで突然自宅までみえました。
その時、3時間ほど話し<控訴されていたら無理、いがらしさんが控訴を取り下げ一審を認めたら東映とともに考えます>と繰り返し話しました。
法的には<ビジネスと裁判>は切りはなせるのかもしれません。
しかし、一般常識として本家のいがらし氏が<原作者ではない>と訴えているのですから業者にいくら懇願されても応える事はできないのです。
その後、いがらし氏が上告した現在、ダン、サンブライトの弁護士はいがらし氏の主張と同調しました。
原作者としての権利を認め<マルシーに水木の名を入れた方がよい>と進言した<弁理士>でもある伊藤真弁護士を認めてきましたが、今までとは違ったその矛盾した今回の主張にはたいへんがっかりいたしました。
むろん、そのような主張なら最高裁後も円満な話し合いは無理かと思っています。
 
今後については、先に述べたように多くのグッズが東映アニメの商標権を侵害している以上、私ひとりでは何も決める事は出来ません。
そして、私個人としてはもはやグッズを生かすことは考えておりません。
私が原作を書いた作品自体についても、長い裁判の間にいがらしゆみこ氏の<絵のキャンディ>とは精神的にやっ訣別できました。
この事件後、すべてを元に戻し講談社、東映アニメに私の権利を任せることができたらと願っております。