通 知 書

 当職は、後記通知人の依頼により通知します。
一 さて、貴女は、「いがらしゆみこから漫画家の皆様へ」(以下、「誹謗中傷文書」という。)と題した書面を漫画家各位に送付されておりますが、その中で通知人との紛争の経過等について、著しく偽った事実を記載しております。
 これは通知人に対する名誉毀損であることは明白であり、ここに通知人は厳重に抗議します。
 直ちに右名誉毀損行為を停止し、前記書面の送付先に対して訂正の連絡をし、通知人に対して謝罪することを要求します。
二 以下貴女の誹謗中傷文書に即して指摘します。
1 まず、地裁判決・高裁判決についての貴女の主張は、極めて一方的なものであり、断じて容認できません。
 即ち、これらの判決は、原作が原著作物であり、漫画が二次的著作物であるという実態から著作権法上当然に導かれる結論を述べただけであり、何ら不当なものではない筈です。
 あたかも通知人が横車を押して貴女の企画を妨害したかのような姑息なすり替えがされておりますが、後にも具体的事実を指摘するとおり、貴女こそが原作者を無視して無断で各種企画等を押し進め、説明を求める通知人に対して一切まともな説明をしてこなかったのではありませんか。地裁・高裁の判決は著作権法の解釈に基づく当然の結論ですが、裁判所としては当然貴女の所業を見た上で判決をしているものであり、あのような判決が出されたのは貴女の行動の結果であることはいうまでもありません。
 また、この期に及んでも、キャラクター絵について「漫画家のみが魂と労力を注ぎ込んだ」と言われるに至っては、心底絶望せざるを得ません。通知人は漫画家の労力については当初から十分評価する態度を取っており、それは貴女ご自身ご存知のとおりです。しかし、キャラクター絵がファンにもてはやされるについては、ストーリーも含む漫画作品全体のイメージが寄与していることは明らかであり、その点で絵についても漫画家のみのものではないと申し上げてきたものです。しかし貴女にとってはこの点は未だ理解不能のようです。
 なお、貴女が商品化されたものについては、「魂と労力を注ぎ込んだ」などというほどではない、以前の作品の流用ないしは一部改変がほとんどであることも付言しておきます。
2 イラスト集の企画の際に通知人が五対五のロイヤリティ配分を要求したという虚偽については、これまでも何度も指摘してきましたが、かような虚偽を第三者に対して送付する文書においても言い募られるについては、明白なる名誉毀損行為として憤懣やる方がありません。
 通知人は、なかよし編集部から「イラスト集といっても書き下ろしではない。水木は新たにポエムを書き下ろすので、今回は五対五にする」という説明をされてそれを受け入れただけであり、通知人から要求した事実は全くありません。
3 「水木氏の理由不明の拒絶は10や20の件数ではなく」というに及んでは、あきれ果てるばかりです。一体、いつ、どのような企画を拒絶したというのですか。具体的な指摘などできようもない筈です。このように拒絶した事実すらないのですから。
4 バンプレスト社のプリクラが「同社のショールームでテスト設置されていたものに過ぎない」というのも全くの虚偽です。松戸駅前の「東京ガリバー」というゲームセンター(ショールームではない)に設置されたこと、雑誌やテレビでも紹介されたこと、バンプレスト社とは貴女が香港で設立したキャンディコーポレーションなる正体不明の会社が契約していたこと、等訴訟においても具体的に指摘してきたものですのに、全てお忘れになったのですか。それともこの文書が通知人の目に触れることはないと思って(確かにこの誹謗中傷文書は通知人の窮状に同情を寄せられている心ある漫画家の先生には送られていないようです)のことでしょうか。
5 「彼女は立腹のあまりか話し合いにさえ応じてくれず、ある日突然裁判を提起したのです」というに及んでは、嘘を言うにも限度があろうというものです。
 貴女代理人弁護士が一方的に契約を解除すると主張してはいましたが、フジサンケイアドワークの朝井専務(当時)が「この状態では動かせませんね」と仰っているのを信頼して出国した通知人の隙をついて、「複製原画」の販売企画を大々的に強行したことから訴訟に至った経過をお忘れですか。権利ばかりか人格も踏みにじられたのは通知人の方です。
6 「彼女の要求(謝罪と300万円余りの慰謝料等」とは何でしょうか。訴状すら見ていないのか、それとも故意に偽っておられるのか。通知人が貴女に求めたのは合計金一五〇万円のささやかな慰謝料等に過ぎません。その内訳たるや、プリクラの件の慰謝料が四〇万円(しかもそのうち三〇万円は通知人を抹殺した著作権表示をしたことに対するものであり、無断で契約したことについてはわずか金一〇万円)、香港で無断で出版契約をしていたことについてもわずか金一〇万円(書籍の出版契約であり、「絵のみの利用は私の権利」という貴女の御主張からしても到底正当化のしようのないものです)、「複製原画の無断出版販売」によるものが金一〇〇万円というものです。
 なお、ダンエンタープライズほかを相手とする訴訟の審理において、貴女が本件提訴後に及んで強行したビジネスにおいては、八億円以上の売上があり、貴女のロイヤルティは二六〇〇万円以上にも及ぶことが明らかにされていることも指摘しておきます。
 ここから分かるとおり、貴女と違って通知人の経済的請求はほとんど名目に過ぎず、貴女の無謀な暴走に対して再考を促したいというギリギリの気持ちで提訴に及んだものです。この通知人の意図・気持ちなどは訴訟の期間中も絶えず呼びかけてきたのですが、これに対し貴女はというと、通知人を単なる参考著作物の作成者と規定し、漫画作品についても本来権利はないと言い募り(第一審代理人の弁護士の責任に転嫁していますが、貴女ご自身法廷でそのように供述されたことはどうお考えですか。通知人は法廷においても漫画作品に対する貴女が果たした役割については十全の敬意を表してきたにもかかわらずです)、第一審敗訴後に及んでもインターネット通販を初めとする企画を強行し、近時に及んでも「パロディ」と称してキャラクターを使用した低俗な広告企画を朝日新聞に掲載するなど、作品自体及び原作者に対して敵対的な愚弄する態度をとり続けているではありませんか。
7 「『キャンディ・キャンディ』は私と担当の編集者との間で企画が生まれ」たというのも事実に反します。作品についての貴女のアイデアも勿論あったでしょうが、企画は編集部がたてたものであり、肝心のストーリーは通知人が生み出したものです。このくだりの書きよう自体に図らずも貴女の原作者に対する姿勢が見えていると言わざるを得ません。
8 「この一見変哲もない判決が・・・挨拶状にキャラ絵を使用する事さえできない」などというのも他の漫画家の先生方の同情を引こうとする姑息なすり替えです。通知人はそのような非常識な禁止をしたことは一度もありませんし、これからもするつもりもありません。しかるに貴女のしたことは、無断でキャラ絵を大々的に「商業展開」することです。
9 インターネットでの出来事については、通知人こそ自分のホームページで有利不利を問わずに事実を明らかにしております。一体何をもって「自分に不都合な点は明確には書かず」といわれる筋合はありません。不都合なことを書かないのは貴女の方ではありませんか。
三 以上貴女の誹謗中傷文書の虚偽は挙げれば枚挙に暇ありません。
 貴女におかれては、直ちにかような名誉毀損行為を停止し、同文書の送付先に訂正を行うほか、通知人に対して衷心からの謝罪を行うことも要求します。
 なお、この文書の内容はそのまま貴女のホームページに掲載して下さい。
 そうされない場合は、公平のため貴女の誹謗中傷文書とともにこの文書を通知人のホームページに掲載することとします。

 平成一三年二月二一日

通知人 名木田 恵子
   東京都新宿区四谷二丁目四番地
            久保ビル九階
     向井総合法律事務所
    通知人代理人弁護士 向井 千景
       同      坂井 大輔
   東京都港区西新橋一丁目一九番六号
桔梗備前ビル四階
 あおぞらみなと法律事務所
 電 話〇三(五五一〇)三三〇一
 FAX〇三(五五一〇)三三〇二
通知人代理人弁護士 伊東 大祐

五十嵐 優美子 殿